2023年12月 鈴木 義幸さん
(株式会社 コーチ・エィ代表取締役 社長執行役員)
Go For It
─ 鈴木さんの少年時代はどのように過ごされましたでしょうか?
鈴木さん: 僕が小学生の時はとにかく読売ジャイアンツの大ファンで、巨人の選手になりたいとずっと思っていました。伊豆の伊東駅の裏に実家があって、周りが全部保養所や寮なんですね。普通の家が周りになくて同世代の友達が近くにいなかったので、学校から帰ってくると壁にボールをぶつけてキャッチボールをするような、一人遊びをすることが多かったです。
─ 鈴木さんはスポーツが大変お好きだとお聞きしていますが。
鈴木さん: そうですね、野球は特に好きでした。静岡市にある全寮制の中高一貫校に進学し、最初は野球部に入ろうと思って、野球部の入部申込書を職員室に出しに行きました。でも、野球部の先生がわからなかったので、「野球部の先生はどこにいますか」と聞いた相手がたまたまラグビー部の監督だったんです。そこで、その監督からラグビー部に来ないかと勧誘されました。
その監督が「今年からラグビー部を強くする。君たちは中学で優勝して、高校でも優勝するのだ」と熱く語るので、何だかその気になって入部してしまいました。そして本当に中学で優勝して東海大会でも優勝しました。僕の出身校である静岡聖光学院は今は花園常連校ですが、僕がいた時代に初めて静岡で優勝したんです。
面白いのは、この監督はラグビー経験者ではないことです。ラグビーの経験がないのに、「優勝する」という壮大なビジョンだけを語っていました。ご自身ではラグビーを教えられないので、ネットワークを駆使してラグビー元日本代表の選手を連れてきて指導してくれました。夢以外は何もないところから始まった僕たちは、自発的に自分たちで考えて動く楽しさを体験しました。実は、僕にとってのコーチングの原点のようなものを初めて味わったのが、この中学高校のラグビー部時代でした。
─ その後、慶應義塾大学文学部にご入学されたきっかけを教えていただけますか?
また、4年間にわたる大学生活はどのように過ごされたのでしょうか。ラグビー以外にも日本舞踊と演劇に取り組まれたとお聞きしています。
鈴木さん: 僕が通っていた高校では、毎年1人くらいが東大に進んでいました。少し自慢に聞こえるかもしれませんが、僕は中高6年間の定期試験で1位か2位しか取ったことがないので、自然と自分は東大に行くものだと思い、東大に向けて受験勉強していました。しかし結果的に、東大の受験には失敗してしまいました。なので慶應に行くことにしたというのが正直な話です。
演劇については、僕は中学3年の頃からずっと演劇をやりたいと思っていたんですね。自分で劇団をつくって戯曲を書いて演じるというようなことがしたかった。つかこうへいさんに憧れていて、美学について勉強したかったので、美学が学べる学校という意味でも東大と慶應が進学先の候補だったのです。ですから、慶應だったら文学部哲学科の美学専攻に行こうと思っていました。つかこうへいさんは慶應文学部の演劇研究会出身なので、僕も演劇部に入ろうと思ったのですが、実際に見学に行ったら、雰囲気が想像したのと少し違ったので、入部しませんでした。
しかし、演劇をやりたい、表現したいという気持ちはまだありました。僕の父親は着物の染め職人だったので、日本舞踊の先生につてがあり、その紹介で花柳流の日本舞踊を7年間習いました。かつらをかぶって振袖を着て踊っていました。
ラグビーは同好会で継続し、その他は日本舞踊の活動をするという大学4年間でした。
─ 1997年に株式会社コーチ・エィの前身である有限会社コーチ・トゥエンティワンの設立に携わったそうですが、なぜ日本でコーチングの会社を立ち上げようと考えたのでしょうか?
鈴木さん: 一度社会人を経験した後、3年間アメリカに行って、アメリカの大学院で心理学の修士学位を取得しました。その際に、インターンとしてアメリカの女子刑務所で女囚さんへの心理セラピーを2年半毎日行いました。もともとは心理カウンセラーになりたいと考えていたのですが、インターンを経験して、これは自分にとっては重たい仕事だなと正直に思いました。
アメリカから帰国した時に、当社の創業者から日本でコーチング事業を一緒にやろうと誘われました。自分がこれまでに培ってきた知識や技能を活用できるのではないかと思い、会社の立ち上げに参画しました。
─ 鈴木さんは2001年に株式会社コーチ・エィを設立されて、ここまで世界規模のコーチングファームに成長させてこられたと思います。その間どのようにして顧客を獲得し続け、自社で高いレベルのコーチを育成し続け、ビジネスの輪を拡大してこられたのでしょうか?
鈴木さん: コーチ・エィ設立当初、法人顧客はゼロでした。当時は会社四季報を見ながら、1日100件コールドコールすることを自分で決めていました。営業をやっていた友達にアドバイスを求めると、「あいうえお順に1件も飛ばさずに電話しろ」と言われました。飛ばすと怖くなるから、機械のように電話した方がいいと言われ、そのようにしていました。
最初の頃は100本電話をしてもアポは1件も取れませんでしたが、それをひたすら繰り返していくうちに、知り合いの紹介などから段々と仕事をいただけるようになりました。
また、2000年に僕が初めて出版したのが、『コーチングが人を活かす』という本です。この本は、今でも売れ続けているロングセラーになっています。本の出版当時は「失われた10年」といわれていて、日本の会社は新しいマネジメント手法を模索していました。そこに「コーチング」という新しいマネジメント手法が登場したので、無名の人間のデビュー作であったにもかかわらず、週間ベストセラーのランキングに入ったんです。そのことも、会社が成長するきっかけの一つでしたね。
またその時期に、大手メーカーが、組織変革のために、管理職2400人全員に対するコーチング研修を導入してくれました。研修後の満足度調査で、5点満点のうち平均4.9点という非常に高い評価をいただき、そこから口コミが広がって、売上も飛躍的に伸びていきました。
しかし、2011年に、売上の約55%を占めていた集合研修から撤退することを決めました。なぜなら、コーチ・エィを設立した時には、組織変革を実現するエグゼクティブ・コーチング・ファームになることを目指していたはずだったのに、いつのまにか評価の高い企業研修を提供することが事業の柱になっていたからです。そこで改めて、経営者をコーチすることによって組織全体を変えていくことをやろうと、研修から撤退し、エグゼクティブ・コーチングを事業の柱に据え直しました。
現在、当社のお客様の約8割が東証プライム市場に上場している会社です。そして、そのトップ企業のCEOの方々に、当社のコーチングをご提供しています。やはりトップが変わった時の影響力は本当に大きくて、その影響により組織全体が変わります。
最初は本当にゼロからのスタートでしたが、やっとここまで来たなというのが正直な感想ですね、笑。
─ 御社の顧客の約8割が東証プライム市場に上場している大企業ということですが、業界も業種も様々で、ニーズも課題も全て異なると思います。コーチの方々はどうやってこのような多岐にわたるニーズや課題を正確に把握し、アプローチ方法を考えてコーチングを行っていらっしゃるのですか?
鈴木さん: もちろん経営者の方の状態やその会社を取り巻く周囲の状況を把握して臨みますが、われわれが提供しているのはコーチングであり、コンサルティングではありません。一つ一つの課題に対してソリューションを提供するアプローチ方法ではないため、極端に言うと、相手の業界や企業特有の課題を深く知っている必要はありません。
人は、言葉に対して意味を与えますよね。言葉自体が意味を持つわけではなく、人がその言葉に対して意味を与えているわけです。そしてその「意味」とは、その人のその言葉に対する解釈です。実は、この自分の解釈が、その言葉の意味に制限をかけています。例えば、ある組織での上司の「聞く」ということに対する解釈は、「業務を遂行するために必要な情報を取る」ということだとします。それが、「部下の中に潜んでいるアイディアを表面化する」や、「部下を発奮させる」、「より強いチームを作る」という風に「聞く」ことの意味や解釈が変わると、上司の聞き方が変わります。そうすると、話を聞かれる部下の行動も変わっていきます。
ここで難しいのは、解釈というのは、その人が長年かけて培ってきた経験をもとに作られている点です。例えば、相手がある解釈を持っているのに対して、自分はこういう解釈をしているとぶつけても、相手は簡単に解釈を変えません。経営者に「経営というのはこういうことですよね」と言ったからといって、「なるほどね」とはなりません。
ですから、われわれコーチがやっているのは、相手に問いかけ、考えていただくことで、自分の中で腑に落ちる意味を発見するプロセスを起こしていくことです。
コーチは、相手にとっての思考のパートナーです。そういう意味では、問いのスペシャリストになっていかないと、高いレベルでエグゼクティブの方々にコーチングをご提供することは難しいんですね。
─ 顧客のためにコーチを選任する際に、一番重要視する要素は何でしょうか?(例えば、バックグラウンド、年齢、性別、性格など)
また、顧客と同じ業界にいたコーチを選任するのでしょうか?それともあえて全く異なるバックグラウンドを持つコーチを選任するのでしょうか?
鈴木さん: 当社には現在約120名のコーチがいます。120人のコーチたちは、大企業もしくはコンサルティングファーム出身者が多いです。コーチを決める際に、お客様の業界に合わせて選任することはありません。その人のパーソナリティーや能力が合うか合わないかを見て判断します。
コーチとお客様のマッチングについては、コーチングを受けられる方と事前にお会いし、当社のコーチの中でキャラクターやパーソナリティーが一番合いそうな人を選びます。コーチ側の得意不得意もありますので、相性やパーソナリティーなどから総合的に判断しています。
われわれが使っているコミュニケーションツールの中で「タイプ分け™」というものがあります。コントローラー、プロモーター、サポーター、アナライザーと4つのコミュニケーションのタイプを診断するものです。例えば、コントローラーというタイプは、自分で状況をコントロールして決めるのが好きなのですが、そういう人に対して、相手の人を支援するのが好きなサポーターのコーチを選任すると、あまりうまくいきません。相手を支援したい性質が強い人は、コントローラータイプとのコミュニケーションでは対等になりづらくなってしまうからです。このように、コミュニケーションタイプによるマッチングも考慮に入れ、最終的には僕が決定しています。
─ もしコーチングの途中でエグゼクティブの方からコーチを変えて欲しいというリクエストがあった場合は、どのように対応しますか?
鈴木さん: 状況によりますが、もちろんコーチを変えることもあります。エグゼクティブクラスに対して選任したコーチがうまくいかない場合は、より経験が豊富なコーチに担当させることが多いです。お客様からの信頼を失わないことが最も大事です。
─ ちなみに、コーチの年齢やビジネス経験の豊富さ等の要素は選任する際に考慮されますか?
鈴木さん: 多少考慮します。年齢が若くても、技術があればお客様に満足いただけるコーチングを提供できますが、何万人規模の会社のCEOをコーチングするとなると、やはり経験が求められます。年齢が若いコーチに対する相手の方の偏見や思い込みを乗り越えるためには、非常に高い技術が必要ですし、リスクもあります。
僕が30代でエグゼクティブ・コーチングをやっていた時は、他にコーチが誰もいなかったので、「やらせてください」と言うしかありませんでした。しかし今は、お客様からの投資と期待に十分お応えできるサービスをご提供するために、細心の注意を払ってコーチを選任しています。
─ 以前、アメリカのGEの元CEOジャック・ウェルチ氏が、27歳の女性からコーチングを受けていたという話を聞いたことがあります。あえて性別も年齢も経験したことも全て逆の人からコーチングを受けるということは、自分の見方を変える方法の一つになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
鈴木さん: 理想的にはそうですが、日本では年長者に敬意を払うというカルチャーが根強くあります。例えば、僕は今56歳ですが、60歳や65歳のエグゼクティブの方をコーチングしていても年齢差はそれほど問題になりません。しかし、60代の人が30代の人からコーチングを受けるのは、前述のように経験を上回る技術を証明しなくてはならず、日本の文化ではかなり難しい傾向がありますよね。実際のところ、アメリカでも有名なコーチはシニアの方が多く、年齢を重ねただけの実力があります。
─ 御社は現在120名のプロコーチを擁していると伺っています。コーチの方々のプロフィールを拝見しますと、他業界から転職してこられたケースがとても多いと感じていますが、それぞれのバックグラウンドに合わせて育成していますでしょうか?
また、一人前のコーチに育つまでどのぐらい時間がかかりますか?
鈴木さん: バックグラウンドではなく、それぞれのパーソナリティやキャラクターに合わせて育てています。管理職向けのコーチングができるまでは平均1年ぐらいかかります。エグゼクティブ・コーチングの場合は、早い人でも2年はかかります。
─ 御社社内でどのようにコーチを評価しているのでしょうか? どうやってエグゼクティブコーチになれるのでしょうか?
鈴木さん: 当社社内の仕組みとしては、マイスター制度というのがありまして、ベテランのエグゼクティブコーチについてトレーニングを1対1で受けるんです。さらに、スキルチェックに合格する必要があります。スキルチェックに加えて、社内の評価基準を満たす必要があり、最終的に経営会議で判断します。現在120人のコーチのうちエグゼクティブコーチができる一番若い人は30代です。
─ 御社のエグゼクティブコーチの顧客は東証プライムに上場している会社のCEOの方々を想定していますでしょうか?
鈴木さん: 30代でエグゼクティブコーチになれたからといって、すぐには大企業のCEOクラスのコーチはできないですね。やはりエグゼクティブコーチになってから経験を積んでいかなければなりません。トップの方々が抱えている課題も大きいですし、色々な意味で百戦錬磨の方々なので、人を見る目も厳しいです。信頼を得るためには、ある程度の経験を積む必要があります。
─ 鈴木さんは会社を経営する傍ら、エグゼクティブ・コーチングを行っています。お仕事されるトータルの時間が10だとしますと、エグゼクティブコーチと会社経営にそれぞれどのぐらいの時間を割いていますでしょうか?
鈴木さん: 今は経営者としての仕事が中心となっていますが、数人のクライアントにエグゼクティブ・コーチングをご提供しています。基本は2週間ないし3週間に1回1時間のセッションをします。クライアントの方とは、当社が開発したコーチングのアプリを使って、セッションとセッションの間もアプリ上で週に数回必ずやり取りしています。セッションだけでなく、一緒にお食事をしたり、ときにはゴルフなど、色々なお付き合いをしています。それらを全部含めると、2割ぐらいの時間を割いているのではないでしょうか。残りの8割の時間は経営者としての仕事に当てています。
─ コーチ・エィでは、AIコーチングの開発もされているとうかがいました。
鈴木さん: 今僕の頭の半分はAIコーチングに使っていますね。AIコーチングは本当にゲームチェンジャーになると思っています。
当社は組織全体を変革するサービスをご提供していますが、現在、われわれのコーチングを受ける方は、組織の中でもごく限られた方々です。大企業の役員層、管理職層に限られています。
コーチングとは即ち、問われることの価値を提供するものです。人間は問われないと、そこに意識が向きません。例えば、「昨日何を食べましたか?」と聞かれてはじめて意識がそこに向くわけです。僕らは問われることの価値を信じていますし、もっと多くの人に提供したいとずっと思ってきました。
例えば、学校の先生からコーチングを受けたいというお問い合わせをとてもたくさんいただきます。もし学校の先生が「生徒とどういう関係をつくりたいですか」「本当は生徒が先生に言いたいけど言えないことは何ですか」といったことを問われたら、とても価値があると思うのですが、人間がやっている限りコーチングの機会を提供できるチャンスは非常に限定的です。ここにAIのコーチングの出番とあると思っています。
2023年1月、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で法人向けAIコーチングの開発・提供をしている会社のCEOに出会いました。彼らが開発したAIコーチングのクオリティーがとても高かったので、業務提携契約を結び、当社監修のもと日本語バージョンを開発しました。今年11月から本格的に販売が始まっています。これをどのように日本の社会に広めていけるかについて、今は、日々、僕の頭の半分を使って考えていますね。
─ AIによるコーチングによって、人手を増やさずにもっと多くの顧客にコーチングを提供できるということですね。
鈴木さん: はい。AIのメリットはコストを抑えていつでもどこでも簡単にできるところです。しかし、人間のコーチにしかできないこともたくさんあります。例えば、「シャオシャオさんは将来に向けてどういう目標がありますか」という問いに対して、シャオシャオさんが何かを答えたとします。人間のコーチは、VERBAL(言語的表現)とNON-VERBAL(非言語的表現)に不一致があった場合、それに敏感に気づきます。口で「やりたい」と言っていても、本当にやりたいと思っていないときなどはそれを察知することができます。AIコーチは、まだそのレベルではありません。なぜなら、AIはまだVERBALとNON-VERBALの不一致を見極められないからです。
─ そうしますと、人間のどなたをモデルにAIに学習させるのでしょうか?
鈴木さん: AIのコーチには世界のトップコーチが使う膨大な言語パターンを学習させているんです。それを生成AIのチャットGPT3.5と4.0のエンジンを使って、状況に合わせて最適な問いかけを出せるようにしています。ChatGPTは通常ユーザー側の質問に対して答えを出してくれます。AIコーチの場合は、チャットGPTのエンジン側が質問してきて、ユーザーの中にある答えを表に出します。つまり、使い方を逆転させていますね。われわれは、まだ世の中に存在していない、法人に特化した良質なAIコーチを誕生させる準備をしています。
─ ビジネスエグゼクティブの方々を対象にコーチングを行う際に、恐らくコーチより年齢も高いでしょうし、ビジネス経験も豊富だと思います。気後れしないで、冷静かつ的確にコーチングを行うにはどうしたらいいでしょうか?
鈴木さん: まず慣れはありますね。僕がエグゼクティブ・コーチングを始めた初期の頃は、なるべく気後れしないよう自分をセットアップするために、日本社会の中でステータスが高いと言われる人にできる限り会いに行ったり、コーチングしたりすることを意識的にやろうとしていました。いまでも、技術的、心理的にいろいろ試してみています。例えば、僕はゴルフが大好きでよく行きますが、ゴルフ場では、プレイ終了後にお風呂に入りますね。名門ゴルフ場では、お風呂で裸になっている偉い方たちをよく見ます。そうすると、同じ人間だなという気持ちになり、気後れしないでコーチングができます、笑。
─ 鈴木さんご自身がコーチを務める際に緊張せずにリラックスしつつ、最高のパフォーマンスを発揮する秘訣はありますか?
鈴木さん: 人間には右脳と左脳がありますね。人が緊張する時というのは、色々ネガティブなことを考えて緊張するのではないでしょうか。ネガティブなことを思考するのは左脳なんです。逆に言うと、左脳の動きを抑えれば緊張は起きにくいんですよ。右手を使っていると左脳が動きにくいので、緊張しにくい。例えば、人前で話していて緊張する時に、マーカーペンを右手で握るだけで、緊張がかなり抑えられます。
─ エグゼクティブコーチとしての鈴木さんの強みを教えていただけますか?
鈴木さん: 大学時代の専攻は人間関係学科社会学なのですが、実際に好んで勉強した科目は社会心理学でした。アメリカで3年半近く臨床心理学を勉強していて、心理学系の名著といわれるものを全部読みましたし、今でも心理学に高い関心や興味があります。心理学のバックグラウンドを持っていることが僕の強みかなと思います。
─ お仕事は大変お忙しいと思いますが、普段はどんなことをしてリフレッシュをしていますでしょうか?
ご趣味と休日の過ごし方を教えていただけますか?
鈴木さん: 趣味はゴルフです。リフレッシュ方法ですが、ルーティーンを続けることで心身を整えています。朝は平日だろうが休みだろうが関係なく、5時に起きます。起きてから30分瞑想します。5時半から散歩に出かけて、近くの公園でスクワットをして懸垂をやって、帰宅します。休日は、ゴルフをしていることが圧倒的に多いですね。お酒は基本的に毎日飲んでいます。筋トレに関しては、懸垂が一番良い全身運動になるので、朝10回2セット、夜寝る前に10回2セットを続けています。家の中に懸垂マシンがありますよ。これからは社内にも懸垂マシンを置くことにしました、笑。バーにつかまるだけでリフレッシュになりますね。
─ 鈴木さんの睡眠時間は何時間ぐらいですか?
鈴木さん: 早い時は10時、遅くても10時半に寝るようにしています。ですから、原則7時間寝ていますね。
─ とても健康的な生活を送っていますね。
また、鈴木さんはご多忙を極めていて、ストレスも多いのではないかなとお察ししますが、どのようにストレスについて考えて対処していらっしゃいますか?
鈴木さん: 生きていれば絶対にストレスはあるので、レジリエンス(弾力性)をいかに高めておくかということが重要ですね。レジリエンス(弾力性)を高めるのに最も良い方法は寝ることなのです。十分寝ていればいらつかないですよね。睡眠不足はいらつき、むかつきを誘発するので、とにかくたくさん寝た方が良いと思います。
寝る前最低1時間はスマートフォンのスクリーンを見ないとか、少し瞑想してから寝ると寝つきが良くなります。さらに、良い枕やベッドを選んで、寝室が快適な温度になっていることも大事です。とにかく寝る環境はとても大切です。僕が買ったものの中で車の次に高いのはベッドですね。
─ 鈴木さんの夢を教えていただけますか(お仕事の夢とプライベートの夢)?
鈴木さん: 仕事の夢は、先ほどお話ししたAIコーチングをとにかく広めたいこと。それから海外の企業にコーチングサービスを提供することですね。当社の海外拠点は上海やニューヨーク、バンコクなどにありますが、現在は、日本企業のサポートが中心です。これからは、やはり、コーチングの本番であるアメリカで現地企業の方にサービスを提供したい。それができてはじめて、世界で活躍する日本発のコーチングファームだと言えるのではないでしょうか。
プライベートの夢に関しては、イギリスのロンドンにアパートを購入して、1年の半分ぐらい住みたいです。ロンドンが大好きなんです。僕の息子が塾高3年生の時に突然イギリスに留学に行きたいと言って、ロンドンに6年半住んでいました。その間、僕も時々ロンドンに行っているうちに、ロンドンが大好きになって住みたくなりました。できればですが、65歳過ぎたら、日本半分ロンドン半分の生活を送りたいですね、笑。
─ 最後に鈴木さんのお好きな言葉を教えていただけますか?
鈴木さん: Go For It!
※聞き手はThe Voice 編集長シャオシャオ
※ゲストの肩書きや記事の内容は全て取材当時(2023年10月)のものである。
編集後記
中学高校のラグビー部で体験した自発的に考えて動く楽しさは鈴木さんにとってのコーチングの原点でした。
その当時からコーチングへの好奇心が芽生え、アメリカで心理学を学んだ後、帰国して会社の立ち上げに参画しました。情熱、飽くなき探究心、並々ならぬ努力、そして、必ず日本でコーチングを広めて日本社会を良い方向へ変えるという熱意と心意気が実を結び、様々な困難を乗り越え、株式会社コーチ・エィを世界最大規模のコーチングファームへと目覚ましく成長させてきました。
鈴木さんは心理学だけでなく、脳科学にも造詣が深く、長年のコーチングで培ってきたご経験から、緊張を緩和する方法、ストレスへの対処法、大事な場面で気後れしない方法について詳しく教えてくれました。
コーチは問いのエキスパートであり、相手の思考のパートナーでもあります。問いを通して相手が考えるきっかけをつくり、なるほどと腑に落ち、本人で発見していくプロセスを起こすのがコーチングだと鈴木さんはおっしゃいました。
今後は日本にとどまらず、世界中の人々がコーチングに触れていただく機会を増やし、仕事だけでなく、日常生活にも活用し、多くの気付きや発見につながっていき、人々にとって一層豊かさと幸せを感じられる日々となることを期待しています。そのために、鈴木さんの力強いリーダーシップのもとで進められているA Iコーチングがその一助になることは間違いありません。
鈴木さんは体を動かすことが大好きで、規則正しい生活を送っているそうです。特に上質な睡眠と体を伸ばすことの大切さを教えてくれました。各々に合ったリフレッシュ方法を見つけて、自分らしく充実した生活を送っていきたいですね。
鈴木さん、どうもありがとうございました。
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The Voice編集部 thevoicetmc@gmail.com